フランス映画と焼きナス、マニキュア|  72 patternworks(72パターンワークス)アートコラム

フランス映画と焼きナス、マニキュア

過去の記事を再編しています。

今日は11月1日で、1日といえば映画の日。わたしは布団の中で、ふと「目黒シネマ」のことを思い出した。

今日は何を上映しているんだ?と、本日の上映作品を調べると、ゴダール作品2本立て。主演はアンナ・カリーナ。ふん、いいね、なんかそういう気分だわ今日。久しぶりにフランス映画でも観に行くか。

 現在の時刻は朝8時30分。11時と14時、どっちの時間から映画を観ようか布団の中で思案する。今から朝食を食べて洗濯物を干し、身支度を整えれば11時開始の映画に間に合いそうだ。

そうと決まればすくっと起き上がり、軽いストレッチをする間にお湯を沸かし、お白湯を飲み、チーズ乗せパンを焼いているうちに洗濯機をまわす。パンをかじりながら洋服のコーディネートを考え、マニキュアもしたかったけれど乾かしている時間はなさそうだと諦める。

電車の時間まであと45分。そう思って食器を洗っている時、昨日八百屋で買った小ぶりのナス7本が目に入る。

ナスが、7本ある。

どう食べるか、焼きナスにしたら夕飯のちょっとしたおかずになるなと思い立ち、突如フライパンに7本のナスを並べて火を入れる。焼きナスは熱いうちに皮をむくのが大切だけど、7本の小ナスの皮を電車の時間までに剥き終えることはできるのか。いや、もう火を入れているから後戻りはできない。

化粧下地を頬にのばしながら、ちらちら小ナスの炙られ具合をうかがう。焦げた匂いがしてきたらば、フライパンとナス皮との接地面を変える。仕上げのリップを塗り終えたころ、ナス皮全面に程よく焦げが回った。焼きナスの蛹。わたしは出発タイムリミットの5分前、つまり5分間だけ、ナスの皮剥き用の時間を捻出する。

炙り上がった熱々の子ナス7本中、皮を剥げたのは3本。残り4本については帰宅したら剥いてあげるとしぶしぶ諦め、小走りに駅に向かう。道すがら右手の人差し指の腹がヒリヒリするのを感じる。軽症の火傷だ。ナス皮に負傷させられた。

15分ほどの休憩を挟みつつ、1本目、2本目と続けさまにアンナ・カリーナを堪能する。画面の中の彼女は、右手で男と抱き合いながら、左手で煙草をふかしていた。 彼女のくるんくるんと変わる目の色や目線について、帰りの山手線で思い巡らせていたら、すぐ新宿駅に着いた。乗り換えだ。あ。帰ったらすぐに残りのナス皮を剥かなきゃ。

果たして冷たくなったナス皮は、想像どおり剥きにくかった。剥き終わるだけでなんだか疲れたので、焼きナスを食すのは明日とする。ナス皮を剥く間に溜めておいた湯船に浸かりながら、先ほどのアンナ・カリーナをまた思い出す。さあ今夜は、皮剥きに奮闘して負傷までした指先に、マニキュアを塗ってあげよう。にんまり。色は赤。

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