72 patternworkとは?
日本には、季節の移り変わりを感じ取る目安があります。それが、立春・立夏・立秋・立冬など、1年を24等分した二十四節気。そして、その二十四節気をさらに3つずつの期間に分けた七十二候。
72 patternworksは、この「七十二候」を題材に図案をデザインしています。またその図案でちょっとおもしろい、ちょっといいものを作ります。
七十二候とは?
七十二候は、しちじゅうにこうと読み、1年365日を24で割った二十四節気をさらに3つずつ区切り、約5日間ごとの移り変わりでみた季節の様子をあらわします。
例えば七十二候の第一候は、「東風解凍(こちこおりをとく)」です。これは立春の初候にあたり、毎年2月4日〜8日頃の5日間とされ、やわらかな温かみを含んだ春の風が少しずつ吹き始めて、凍って凝り固まった大地をゆっくり溶かし始める時期という意味を持っています。
このように、七十二候はその時期特有の動植物、空の景色、空気の肌触りなどを示す言葉であらわされています。
図案や模様づくりの動機
1 隙間なく埋め尽くしたい感覚
幼い頃から”ウォーリーをさがせ!”シリーズや、いわむらかずおさんの”14ひき”シリーズなど、細かく丁寧に書き込まれた絵が大好きでじっくり、飽きずに見ていました。
絵をかき始めたのは2015年からですが、いざ描き始めると、自分の絵にもその傾向が現れました。
私には目の前の世界に「余白」はなくて、どの部分も常に何かで埋め尽くされているように思えます。
「世界には隙間がない」これはずっと自分の中にある感覚です。
目の前に方眼用紙を重ねるとしたら、どのマス目も空白にはなり得なくて、必ず線や色、形、音、匂いなど何かがつまっている感覚。
この認識から、空白や余白は、自分のかくものには今のところ、あまり必要ありません。できるだけ目の前の紙や空間を、埋め尽くしたくなります。たぶんそれが自分に見えている事実だから。
このような自分のものの見方と、際限なく敷きつめることができる図案・模様づくりは、案外相性がいいのではないかと、図案に関心を持ち始めました。
2 一定の題材に深く向き合える図案の性質
アーティストと呼ばれる人を、仮にうちから沸き起こる何かを形にする人だとすれば、恐らく私はアーティスト気質ではないです。沸き起こって描かずにはいられないという境地には、あまり至ったことがない。(内から沸き起こってせずにはいられないのは、私の場合、旅です。)
ですので、今は「何でもいいから好きなものをかいて」と言われると、最終的に何かかくとは思いますが、わりと長く悩みます。
でも何か一定のお題を設定すると、事情が変わります。
「一定の」ということは、つまり制限があるということです。とある設定に対して、制限範囲内で最大限趣向を凝らすのは、前のめり気味に好きでした。
そこにきて、図案・模様づくりには、一定の題材をあらゆる角度から切り取り、深く観察し、具体的に表現することが必要です。
この図案作りの持つ性質は、私に合うように感じています。
そして、作業項目が多く難易度も高いものの、図案・模様づくりは、腰を据えて向き合うだけの価値があるものに感じています。
例えばお題が「雷」や「夏の空気」だとすると、あらゆる角度から雷や夏の空気感と向き合い、切り取り、切り取った数だけ模様を作ることができ、趣向を凝らすことができます。
このような模様や図案づくりの根本的な面白さに、私は好感を持っています。
そして、大人の行う真剣な遊びの一つとして、図案・模様づくりは、私にとっては価値ある時間の使い方になっています。
3 切り取る・解釈する・あらわす
人は、五感に触れたものを自分なりに切り取って、解釈を加えて表にあらわすことがあります。
私の場合は、文字や絵を使って、目に見えたものを切り取り、解釈し、あらわしますし、それによろこびを感じます。
目に見えたもの、感じたことに解釈を加えてあらわす行動は、ある種の人にとってはよろこびで、SNSなどメディアがこれだけ広がったのも、つまりは人が持つこのような行動や欲求に合致したからでしょう。
西洋や東洋の図様、装飾、文様の種類やその歴史を少しずつ学ぶ中で、古今東西の図案家、装飾家がモチーフとしたものに、身の回りの身近なものが多いことを知りました。
この時の図案家の頭の中を想像すると、やはり「目に見えたものを切り取り、解釈し、あらわしたい」思いがあったのではないかと思います。
図案家や装飾家は、モチーフを深く観察して、解釈し、図案や模様という形であらわします。
例えば、植物の実や花、葉の形、生態を観察して、そこに子孫繁栄とか永遠性への願いを意味づけていきます。
モチーフはどのように切り取っても、解釈しても、表現してもよく、切り取り方の数だけ、解釈の数だけ異なるデザインができます。
最近、図案や模様を作ることは、根本的には自分のものの見方を知っていく行動と感じています。
自分は、目に見えたものをどう切り取る人間か、解釈する人間か、あらわそうとする人間か。
皆さんもそうではないかと思いますが、私は人生を通して自分自身を知っていくことに関心が高いので、図案作りは、それを追求するための一つのツールと感じています。
七十二候を題材にする理由
72 patternworksは、季節の移り変わりを七十二候を題材に図案・模様をつくります。ここでは七十二候を図案の題材に選んだ理由をまとめています。それぞれ長いので、ご興味ある方はぜひコラムを読んでみてください。
72 patternworksロゴの形と色
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「点」と「線」と「面」
詳しくはこちらのコラムへ72 patternworksのロゴの形は、「点」と「線」と「面」をあらわしています。またロゴを少し傾けていますが、この角度は23.4度で地軸の傾斜角度をあらわしています。
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五行思想と、始まりと終わりの炭
詳しくはこちらのコラムへ72 patternworksの基本カラーは黄色で、「五行思想」を元にしています。もう一つは炭色です。昔、生命の起源は炭素でおおよそ森羅万象に炭素が含まれると読んだことがあります。