暑いさなか、散歩にでた。
ここのところ、用がないと2日も3日も平気で家を出ない。出たくないでも出られないでもなしに、ただ出ない。
趣味が散歩、が聞いてあきれると散歩に出ることにした。
図書館まで歩いていく。灰色の肩がけバックに本を6冊入れているので右の肩が重い。13時を少し過ぎたところ。
風も昼休憩なのかほとんど吹かない。
黒と白のストライプのタンクトップの下に山吹色のだぼんとしたパンツ、その下に赤いスニーカーという、センスのないサーカス団員みたいな格好で出てきてしまった。
木陰を選んで歩く。暑い。せみはまだ鳴かない。
10m先くらいに小さなおばあさんが買い物袋を提げててこてこ歩いている。その後ろをてこてこ歩く。
わたしは歩くのが早い。が、暑いので、普段の歩調にならない。小さなおばあさんの後ろを、間をつめるようなつめないような感覚で歩いていく。
しかし「何だか後をつけられている」と、おばあさんが思っていたらやだな、かわいそうだな、と思って、次の角を曲がる。
曲がってみると、今度はおじいさんがよたよたと歩いていた。
小さなおばあさんの気苦労を解消した、と思ったのに、次の道にはよたよたのおじいさんがいたので、夏の道はままならない。
少し視線をふわふわさせているうちに、ふと見るとおじいさんはいなくなった。どこかの家に入ったのかと少し目で追ったが見当たらなかった。
暑い。空気のなかの酸素の多そうなところを当てずっぽうに吸い込んでみたりする。
今度は30mほど前方のアパートから、若そうな男女がふわりと出てきた。出てきて、わたしと同じ方角に歩いていく。歩きながら手をつなぎあったりしている。
男のほうは背が高くて顔が小さくて大変スタイルがよいようだ。近頃の男の子は見てくれがいい、と思って、近頃の男の子ってどのあたりの年齢だと思っているんだっけ、と思ったりする。
女の子は白いトップスに青、というより群青色みたいなミニスカートをはいていて、その下にすらりとはいえないが白々とした腿が伸びている。そうして跳ねるみたいに歩いていく。太陽光線をよく吸ったアスファルトの上に、その跳ねるみたいな白い腿だけが異様に目立つ。女の子の腿なのに、女の子のものではないみたいである。それでもやはり、絶対あの女の子のものなのである。
足元をみると、とかげが轢かれていた。ぺしゃんこというよりもっとぺしゃんこな感じになって、首から上はなかった。とかげの首から上はどこにいってしまったんだろう。
夏の道を歩いて、とり止めないことを道々思う。とり止めのないことばかりを思う。