10年前の誕生日に自分に絵本を2冊買いました。
「よあけ」という絵本と「あめのひ」という絵本。
どちらもポーランド生まれでアメリカで活躍したユリー・シュルヴィッツの絵本です。
タイトルも絵もとても大人っぽい絵本だと手に取る。次にページをめくって、瀬田貞二さんのよあけを象徴するすばらしい一言一言に感じ入る。そういう絵本。
やまが くろぐろと しずもる。
うごくものがない。
こういった一言だけで、その絵を表現し切る言葉があることに驚きます。
そしてシュルヴィッツの絵。
この絵本は中国の「漁翁」という漢詩がモチーフらしいけれど、夜明けのあのひとときの靄だった様子、生きものが目覚める直前の澄み切った空気、肌寒さ、静けさなんかを巧みに絵のなかに閉じ込めることができるシュルヴィッツに悔しさを覚えてしまいます。
夜明けのひとときとは、24時間のなかで一番静謐で、清潔な一秒一秒が流れているのだろうなと絵から想像できます。
絵に描かれる山や湖は、間違いなく無数の生命を内包しているわけです。そして生命とは騒がしくて、じっとしていなくて、気持ち悪いくらいエネルギーを発するものだと思うのに、「よあけ」のなかの絵は、その生命のエネルギーを、全部包み込んだうえでの「無音」を描いている。
だから、何度読んでも、ぎゅっと心をしぼられるのだと思います。
見かけたらぜひ手にとってみてくださいませ。