「木はいいなあ」という絵本。なんて秀逸なタイトルでしょう。
作者のジャニス・メイ・ユードリイは、今から50年以上も前のアメリカの作家です。
この時代のアメリカには、今なお読み続けられている、すばらしい絵本がたくさん出ています。すばらしい作家さんがたくさんいます。ちなみにこの絵本は、1957年にコールデコット賞も受賞しています。
わたしは木がとても好きです。なので、自然に惹きつけられるような感じでこの本を手に取りました。
邦題は「木はいいなあ」、原題は「A TREE IS NICE」。
清々しいまでにシンプルで、何となく声に出して読んでみたくなるタイトル。これって3才児でも呟けそうな一言です。
でもこの絵本は、大人のユードリイが描いている。だから、こういうやわらかい心で感じた思いを、素直に紙に落とす大人のユードリイは、いいなあと思います。ユードリイ自身が木が好きなことも、直に伝わります。
たくさんの木があれば、どれだけうれしいことがあるかしら。
たった一本木があるだけで、どれだけ毎日がすてきになるかしら。
そういったことを、最小限のことばで、ユードリイはつづります。
何度か読んで、わたしは「本質」という言葉を浮かべました。わたしは本質って何かをよく考えます。考えますが、結局うまくつかめないほうが、俄然多いです。
「木はいい」というのは、決して木の本質ではないでしょう。でもひょっとしたら、「木」と「人間」の関係における本質は「木はいいなあ」であれば、とてもハッピーな気がします。
お話の締めくくりが、わたしはとっても好きです。
読む機会があれば、ぜひ一度読んでみてくださいませ。
※表紙絵はお借りしました。