丸谷才一の日本語相談 | 72 パターンワークス ブックレビューコラム

丸谷才一さんの「日本語相談」

もっと文章、ひいては日本語を学びたいといろいろ濫読していた時期があります。

その時読んで、おもしろかったのが、「丸谷才一の日本語相談」。

井上ひさしさんがご自身の文章讀本にて、丸谷才一さんの文のまとめかたは常に秀逸!と褒めちぎっていたので読んでみました。

以前(今もあるのかしら?)週刊朝日に、読者から寄せられた日本語の語源とか疑問について、文章の第一人者たる4名が一問一答していくコーナーがあったらしく、この本はその一問一答集。

回答がとても誠実、真面目、さらにユーモアがあっておもしろいし、そもそも質問者の質問も結構ディープですw。

たとえば、「なぜ一に〇〇、二に〇〇、三四がなくて、五に・・」となぜ三と四を飛ばすのさ!

確かに、笑。

この質問への丸谷さんの解説もとても誠実でおもしろいです。

日本人は昔から三という数字が好きで、三は呪力を持つと考えていた。三つあることに独特の美的意識を持っているのだそうです。だから何かにつけ、三つ揃えたがったとw。

鏡、剣、勾玉で三種の神器。

世界は和朝(日本)、唐土(中国)、天竺(インド)の三国で成り立つ。

人生の心得は、見ざる、言わざる、聞かざる。

三名山、三松原、三関、、、とにかく何でも三つ一組にしたがるとw。

特に意識していなかったけれど、本当だなあと思います。

ところが三つ並べたいところが、ひとつの質なり風采ががたっと落ちる場合がある(これも確かにw)。

うな丼、天丼、親子丼。とくれば親子丼はひいき目に見てもちょっと劣る気もする。しかし三つ揃えたい。というか三つ揃えねば日本文化に背く。 ということで三つ揃えたいけれど、一つめ、二つ目とのへだたりを表現するために「三四がなくて、五に・・」とするそうです。

おもしろい!

また別の質問では「〇〇もへちまもあるものか!というけれど、なぜここでへちまが突然出てくるのさ!

確かにw。

これは驚きだったのですが、昔の日本語には「え、け、せ、て、ね、へ、め、ゑ、れ」のエ列音ではじまる言葉は少なく、少ないばかりか、エ列音には良いイメージを持っていなかったそうです。

それで、他のア列、イ列、ウ列、オ列がまともな言葉の意味はほぼカバーしてしまったので、エ列音がその他を担うことになったと。

へ=屁!を筆頭に、へつらう、へた、へなちょこ、へま、などあまりイメージの良くない言葉が確かにへで始まるなあと驚き。

他にも、へなへな、へろへろ、べらべら、でれでれ、けたけた。エ列音にはこういう言葉があります。

なんだか取り柄にもならないような意味ばかりですね。日本語っておもしろい。

へちまは、昔は風に吹かれてゆれているだけで、あとはへちま水をとるだけと馬鹿にされていたのですって。それで、〇〇もへちまもあるものか!となるようです。

この日本語相談は、丸谷さんのほか、井上ひさしさん、大野晋さん、大岡信さん版もあるらしい。読まなきゃ。

※表紙はお借りしています。

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