その時読んで、おもしろかったのが、「丸谷才一の日本語相談」。
井上ひさしさんがご自身の文章讀本にて、丸谷才一さんの文のまとめかたは常に秀逸!と褒めちぎっていたので読んでみました。
以前(今もあるのかしら?)週刊朝日に、読者から寄せられた日本語の語源とか疑問について、文章の第一人者たる4名が一問一答していくコーナーがあったらしく、この本はその一問一答集。
回答がとても誠実、真面目、さらにユーモアがあっておもしろいし、そもそも質問者の質問も結構ディープですw。
たとえば、「なぜ一に〇〇、二に〇〇、三四がなくて、五に・・」となぜ三と四を飛ばすのさ!
確かに、笑。
この質問への丸谷さんの解説もとても誠実でおもしろいです。
日本人は昔から三という数字が好きで、三は呪力を持つと考えていた。三つあることに独特の美的意識を持っているのだそうです。だから何かにつけ、三つ揃えたがったとw。
鏡、剣、勾玉で三種の神器。
世界は和朝(日本)、唐土(中国)、天竺(インド)の三国で成り立つ。
人生の心得は、見ざる、言わざる、聞かざる。
三名山、三松原、三関、、、とにかく何でも三つ一組にしたがるとw。
特に意識していなかったけれど、本当だなあと思います。
ところが三つ並べたいところが、ひとつの質なり風采ががたっと落ちる場合がある(これも確かにw)。
うな丼、天丼、親子丼。とくれば親子丼はひいき目に見てもちょっと劣る気もする。しかし三つ揃えたい。というか三つ揃えねば日本文化に背く。 ということで三つ揃えたいけれど、一つめ、二つ目とのへだたりを表現するために「三四がなくて、五に・・」とするそうです。
おもしろい!
また別の質問では「〇〇もへちまもあるものか!というけれど、なぜここでへちまが突然出てくるのさ!
確かにw。
これは驚きだったのですが、昔の日本語には「え、け、せ、て、ね、へ、め、ゑ、れ」のエ列音ではじまる言葉は少なく、少ないばかりか、エ列音には良いイメージを持っていなかったそうです。
それで、他のア列、イ列、ウ列、オ列がまともな言葉の意味はほぼカバーしてしまったので、エ列音がその他を担うことになったと。
へ=屁!を筆頭に、へつらう、へた、へなちょこ、へま、などあまりイメージの良くない言葉が確かにへで始まるなあと驚き。
他にも、へなへな、へろへろ、べらべら、でれでれ、けたけた。エ列音にはこういう言葉があります。
なんだか取り柄にもならないような意味ばかりですね。日本語っておもしろい。
へちまは、昔は風に吹かれてゆれているだけで、あとはへちま水をとるだけと馬鹿にされていたのですって。それで、〇〇もへちまもあるものか!となるようです。
この日本語相談は、丸谷さんのほか、井上ひさしさん、大野晋さん、大岡信さん版もあるらしい。読まなきゃ。
※表紙はお借りしています。